ソーシャルメディアがあらゆる場所で使用されるようになった一方で、こうしたネットワークの安全性とプライバシーに対する関心が高まっています。ユーザーがこれらのプラットフォームに提供するデータの量と、プラットフォームがこの情報をどのように使用するかに起因して、ソーシャルメディアのプライバシーの問題はますます議論されるようになっています。
現在、多くの行政機関がソーシャルメディアのプライバシーポリシーを導入するための取り組みを行っており、多くの企業が顧客データを保護するためのポリシーを導入しているものの、これらの保護は一般ユーザーにとって十分ではありません。ソーシャルメディアでの個人情報の共有に関するリスクを理解することは、ユーザーが自分のプライバシーを保護するための第一歩です。それだけでなく、どのような手順を追加すれば、こうしたサイトでの個人情報の公開をどの程度制限できるか理解することも、ユーザーにとって重要です。
ソーシャルメディアにおける個人情報共有のリスク
ソーシャルネットワークにおけるセキュリティやプライバシーをめぐる具体的な問題とは何でしょうか?実際、こうした問題は数多く存在します。アカウントを登録する前に、すべてのユーザーがこれらの問題について認識しておく必要があります。というのも、ソーシャルメディア上で個人情報を共有するリスクに無頓着であると、個人や、場合によっては企業の評判や財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があるからです。
ソーシャルメディアのプライバシーに関しては考慮すべき問題が数多くありますが、その中でも特に考慮すべきものをいくつか挙げてみましょう。
- ハッキングを受けやすくなる:ソーシャルメディアのプライバシーに関する最大の問題の1つは、詐欺師やサイバー犯罪者がプロファイルから個人情報を抜き出し、サイバー攻撃におけるソーシャルエンジニアリングの手口に悪用したり、ログイン資格情報を推測したりできるということです。
- フィッシング被害を受けるリスクの拡大:ソーシャルメディアは、見知らぬユーザー間の交流を促進することがありますが、サイバー犯罪者がこれを悪用してフィッシング攻撃を仕掛けることがあります。たとえば、架空のコンテストの賞品を受け取るために個人情報を提供するように要求するメッセージをInstagramで送信することなどが、フィッシングの例として挙げられます。
- 現在の居場所をリアルタイムで追跡されるリスク:自分の位置情報をリアルタイムで共有すると、そのユーザーが現在いる場所がいつでも追跡可能な状態となります。これは大変リスクが高い行動です。たとえば、窃盗犯がその情報を悪用し、ユーザーが家にいるかどうかを調べる可能性があります。
- データマイニングの可能性: ソーシャルメディアのデータプライバシーは大きな問題です。なぜなら、これらのネットワークは、サービスのカスタマイズ、広告の表示、顧客の分析、ビジネスモデルの構築など、ほとんどの業務にデータを使用しているからです。生年月日、メールアドレス、場所などの情報はデータマイニングの対象となりやすく、ソーシャルメディアのプラットフォームはこれを好きなように取り扱うことができます。
- 個人情報が盗まれるリスク:ソーシャルメディアネットワークが収集するすべてのデータは、サイバー犯罪者にとっては個人に関する情報を収集するための絶好の標的となります。これにより、個人情報の窃取やクレジットカード詐欺行為などの金融詐欺につながる可能性があります。
- 雇用機会への影響:多くの雇用主は、採用プロセスの一環として候補者のソーシャルメディアのプロファイルをチェックすることを認めています。問題は、雇用主がオンライン上の情報に基づいて雇用を決定する場合、プライバシーに関する意識が低いと判断されると不採用になる可能性があることです。
- ネットいじめの誘発:ソーシャルメディアは、悪意のある個人が匿名で他人をいじめたり、ストーカー行為に及んだりすることを可能にし、特にティーンエイジャーの間で重大な精神衛生上の危機が既に生じています。
- ドキシングのリスク:悪意のある個人がソーシャルメディアから個人情報を収集し、その情報を後で公開することで、その人に精神的苦痛を負わせたり、評判を傷つけたりする可能性があります。
- データの不適切な公開を助長するシステム上の欠陥:たとえば、ある個人がソーシャルメディアのプライベート設定を厳重に設定していても、その人が他のユーザーをタグ付けしたコンテンツは公開される可能性があります。
- 第三者とのデータ共有:多くの場合、ソーシャルメディアプラットフォームの利用規約では、プラットフォームが第三者と情報を共有し、ターゲティング広告など各種の方法で使用することにユーザーが同意する必要があります。このことが、ソーシャルメディアのプライバシーに関する重大な懸念を引き起こしており、アカウント登録時にこれらの規約をよく確認することが重要である理由でもあります。
- デジタルフットプリントが永久に残り続ける:ソーシャルメディア上のすべての投稿(リンク、写真、コメントなど)は、投稿元のユーザーがコンテンツを削除しても、そのプラットフォームの一部として残ります。また、いつでも発見される可能性があります。そのため、ユーザーは何かを投稿する前に、その意味を常に時間をかけて熟慮する必要があります。
- マルウェアの攻撃経路が増える:たとえば、ソーシャルメディアプラットフォーム上のプライベートメッセージを通じてマルウェアを送信するなど、ソーシャルメディアはサイバー犯罪者が攻撃を仕掛けるための新たな手段となる可能性があります。
- 中毒のリスク:ソーシャルメディアネットワークは、ユーザーを夢中にさせ、アクティブにさせるように設計されています。しかし、その結果、強迫観念にとらわれた行動をとり、実生活に支障をきたす人もいます。
- 誤まった情報の拡散:ソーシャルメディア上のコンテンツを規制する能力がほとんどないため、誤った情報やプロパガンダが蔓延しています。この問題は知らぬ間に拡散する傾向が非常に強いため、プラットフォーム上で事実と虚構を区別することはほとんど不可能になっています。
ソーシャルメディアとプライバシー: データの問題
ソーシャルネットワークのプライバシー問題を理解することは、問題による影響を軽減するための第一歩となります。しかし、オンラインにつながっている間、本当に自分自身を守りたいのであれば、どのような種類のデータがこれらの懸念に最も関連性があるのかを理解する必要があります。そうすることで、こうしたネットワークの使用方法や共有する情報について、より多くの情報に基づいた決定を下すのに役立ちます。
場合によっては、これらのネットワークを使用するだけで、同意を得ることなしにデータが共有されることもあります。たとえば、これらのサイトのトラッキングCookieは、ユーザーのオンライン活動を追跡します。これには、アクセスしたWebサイト、プロファイルで共有した内容、オンラインでの購入内容などが含まれます。この種のデータは広告主にとって特に有用であり、広告主は特定のユーザーをターゲットにカスタマイズされた広告セグメントを作成することができます。
サイバー犯罪者などの第三者がソーシャルメディアから取得できる可能性のあるその他の詳細情報には、次のようなものがあります:
- 交際ステータス
- 職歴
- 宗教
- 性別
- ご年齢
- 電話番号とメールアドレス
- 出身地または現在地(正確な住所でも可)
- チェックインした場所とジオタグ
- 趣味
- 興味のある分野
- 共有された写真、動画、個人的な最新情報、リンク
- ソーシャルメディアエンゲージメント(「いいね!」や共有など)
これらの情報はすべて、ソーシャルメディアユーザーのプロファイルを構築するのに非常に役立ちます。これは、ソーシャルメディア上のユーザー体験を個人に合わせてカスタマイズする(ターゲティング広告やフォローすべきアカウントの提案など)際によく使用されます。一方で、サイバー犯罪者もまた、ソーシャルエンジニアリングの戦術を微調整するためにこの情報を収集し、攻撃の成功率を向上させることができます。
ソーシャルメディアにおけるプライバシー保護に関する法律
ソーシャルメディアにおけるプライバシー意識の欠如に対処するため、多くの政府や国際組織が、これらのネットワークで生じている問題の一部を軽減するための法的手段を導入しています。
一般データ保護規則(GDPR)は、個人データを保護する欧州の政策です。その多くの規定の中で、GDPRはユーザーに対して、マーケティング活動へのオプトインまたはサインアップを行った上で、プライバシーポリシーに同意することを要求しています。GDPRにはまた、個人が企業のデータベースから自分のデータをすべて削除するよう要求できる「忘れられる権利」の条項も含まれています。
GDPRに相当するアメリカの法律はカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)で、2020年に施行されたソーシャルメディアのプライバシーに関する法律です。この法律は、テクノロジー企業がデータを収集する能力を制限し、個人情報の使用や取り扱いについて、より大きな権限を個人に付与することを目的としています。CCPAは、ソーシャルメディアネットワークがユーザーから収集できるデータにも影響を及ぼす可能性があります。
米国はまた、児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)によって、未成年者をソーシャルメディアのプライバシー問題から保護しています。2000年から施行されているこの法律は、すべてのオンラインサービスとWebサイト運営者に、13歳未満の子供のプライバシーの保護を義務付けています。たとえば、未成年者の個人情報を収集するには、保護者の同意があることを証明しなければなりません。また、このグループへの販売方法を制限する必要があります。
ネットいじめも大きな問題となっているため、オーストラリアでは2022年、オンラインプライバシー法案と並行して、ネットワークの使用を規制するソーシャルメディア(荒らし対策)法が導入されました。こうした法律は、ソーシャルメディアユーザーによる誹謗中傷に対する苦情の申し立て、ユーザーの年齢確認、プライバシー侵害に対する罰則の実施などを支援します。
企業のためのソーシャルメディアのプライバシーポリシー
企業には、ソーシャルメディアに関する独自のプライバシー問題がいくつかあるため、すべての企業や組織がこの問題をどのように扱うかを理解することが不可欠です。懸念事項の理解は重要ですが、企業、従業員、顧客を保護する強力なソーシャルメディアのプライバシーポリシーの作成も同様に重要です。組織のソーシャルメディアアカウントを取り扱う上でのベストプラクティスをいくつか以下に示します:
- 投稿前に必ず同意を得るようにする。
- 使用する各ソーシャルネットワークのプライバシーポリシーを理解しておく。
- コミュニティのルールとガイドラインを作成し、コメントや投稿を適切に管理する。
- ソーシャルメディアネットワーク上で顧客の情報を使用する際の用途と場所を、顧客に対して明確にする。
- 要求に応じてデータや投稿を消去する。
- 明確なソーシャルメディアポリシーと危機管理計画を策定する。
- インフルエンサーと協力する場合は、彼らがソーシャルメディアのプライバシーに関するすべての関連事項を理解していることを確認する。
- 侵害やハッキングに対処するシステムを導入する。
- 従業員に対するセキュリティ意識向上トレーニングを実施する。
ほとんどの組織にとって、ソーシャルメディアは今やマーケティング戦略における重要な要素となっています。このようなネットワークは、ブランドの認知度を高め、顧客に訴求し、さらには売上を伸ばす上で効果的な方法です。企業にとって大切なのは、顧客がソーシャルメディアのプライバシーをどのように受け止めているかを理解し、データの安全性とプライバシーの保証に関する安心感を与えることです。
ソーシャルメディア上で自分を守る方法
ソーシャルメディア上のプライバシーに関する多くの質問の中で、ソーシャルメディア上でどのように自分を守るかという質問は、 間違いなく最も適切だと言えるでしょう。もちろん、ソーシャルメディアのアカウントを作成しないなど、これらのプラットフォームを使用しないという選択肢もあります。しかし、デジタルで接続された社会では、これはほとんどの人にとって非現実的です。少なくとも、ビジネスにおける人脈構築や情報交換の際、大部分のユーザーはLinkedInのプロファイルに記載された業務経歴を参照したいと思うでしょう。ソーシャルメディアとの関わりをどれだけ少なくしても、あるいはどれだけ広範囲にしたとしても、ソーシャルメディアのプライバシーに関する懸念を緩和するために実施できる対策は数多くあります。ここで、いくつかの重要なポイントをご紹介します。
- 追跡可能な詳細情報の共有を避ける:現在の居場所や日常生活が第三者にわかるような詳細情報、写真、動画などを共有しないようにしてください。滞在した場所を離れた後に共有すれば、こうしたリスクを回避できます。
- 身元情報が確認できる書類は絶対に共有しない:マイナンバーや健康保険証、運転免許証、銀行の口座番号、パスポート番号、および個人を特定する手掛かりとなる情報が掲載されたあらゆる書類を第三者の目にさらすことは、ソーシャルメディアのセキュリティに関する最大の問題の1つです。こうした行為の結果、個人情報の窃取や詐欺行為の標的とされるリスクが極めて高いからです。
- 個人情報はできるだけ共有しないようにする:ほとんどのソーシャルメディアプラットフォームでは、ユーザーに誕生日、出身地、学校、趣味などを本人のプロファイルに記載することを要求しています。こうした情報はソーシャルエンジニアリングに悪用される危険性があるため、必要最低限の項目のみを記載するようにしましょう。
- フォロワーの数を制限してみる:ソーシャルメディアは、誰もが友達となる可能性があるという考え方に基づいて構築されており、サイバー犯罪者はこれを悪用しています。公人や プロファイルの公開が必要な場合を除いて、個人的な知り合いか、プライベートなアカウントを保持している人からのつながりリクエストのみを受け入れるのが最善方法です。
- 強力なパスワードを使用する:パスワードマネージャーを使用すれば、一意のパスワードを作成、保存し、ソーシャルメディアアカウントのセキュリティを強化することができます。
- セキュリティが強化されたログイン機能を有効にする:ソーシャルメディア上のデータプライバシーを最大限に保護するため、ほとんどのソーシャルメディアプラットフォームは、多要素認証をサポートしています。通常は、セキュリティを強化する手段として、その有効化をユーザーに要求します。
- プライバシーを高いレベルで保護する設定を指定する:大半のソーシャルメディアプラットフォームでは、ユーザーがアカウントを開設した時点では、基本的なプライバシー設定が既定で設定されています。しかし、これらはユーザー自身の責任において調整する必要があります。時間をかけて確認し、プライバシーを最大限に保護できるような適切な設定にカスタマイズしてください。
- 自動ログアウトを有効にする:SNSには通常、ユーザーのものではないと思われるデバイスや不明な場所からアカウントがアクセスされた場合は自動的にログアウトする設定があります。この設定が有効になっていることを確認してください。
- 公衆Wi-Fiを避ける:セキュリティの低い公衆Wi-Fiネットワークを使用してソーシャルメディアアカウントにログインしないようにしましょう。サイバー犯罪者によってログイン資格情報が盗まれ、関連するソーシャルメディアのアカウントを乗っ取られてしまうリスクがあります。必要に応じて、信頼性が高い仮想プライベートネットワーク(VPN)を使用するようにしてください。
- セキュリティ警告メールを確認する:多くのソーシャルネットワークは、不明なデバイスや場所からログインが試行された時、自動的にメールでセキュリティアラートを送信します。これらのメールをチェックし、不正ログインがないかどうかを確認しましょう。フィッシング詐欺のメールがセキュリティ警告メールに偽装されている場合もあるので、リンクや添付ファイルは開かないようにしてください。
- 休止中のアカウントを削除する:休止状態のSNSアカウントは、サイバー犯罪者の新たな攻撃経路となるため、削除しましょう。
- ソフトウェアを最新の状態に維持する:ブラウザーやソーシャルネットワークアプリなど、すべてのソフトウェアやアプリを最新の状態にし、最新のセキュリティパッチを適用しましょう。
- 規約を注意深く読む:アカウントにサインアップする時、数分かけてサイトの規約を読み、どのようなデータが取得され、どのように使用されるかを確認しましょう。取得されるデータの種類や用途は、ソーシャルメディアのデータのプライバシーに大きく影響する可能性があります。
- 投稿は慎重に行う:削除できるとはいえ、ソーシャルメディア上のすべての写真、動画、投稿はデジタルフットプリントを残します。また、搭乗券、学校名、道路標識など、個人を特定できる詳細が写っている写真は、サイバー犯罪者に悪用される可能性があります。
- 位置情報をオフにする:ほとんどの場合、位置情報サービスはソーシャルメディアの使用時には不要です。オフにしておけば、投稿にジオタグが自動的に付与されることもありません。
- 自分がソーシャルメディアで他人に公開されても構わない範囲を友人や知り合いに周知しておく:ソーシャルメディアの利用が一般的になるにつれ、投稿が他人にどのような影響を与えるかについて考えない人が多くなっています。他人の投稿で言及されたり写真を公開されたりすることを好まない人や、子どもの写真を公開されたくない人もいます。あなたがこうした懸念を持っているのであれば、友達や知り合いにあらかじめ知らせておくべきです。他人が登場する投稿の場合は、必ずその人の許可を得るようにし、投稿をやめてほしいと言われたらやめるようにしましょう。
ソーシャルメディアのプライバシーを理解する
このようなネットワークが世界中で使用されるようになり、ソーシャルメディアにおけるプライバシーの問題はますます大きくなっています。メリットがある一方で、こうしたソーシャルメディアのサイトで自分のデータがどのように管理されているかを理解するのはエンドユーザー側に委ねられています。ほとんどの場合、ユーザーは利用規約をよく読まずに同意し、ソーシャルメディアネットワークにユーザーをプロファイルし、そのデータをたとえばサードパーティの広告主などに販売することを許可しています。このように、ソーシャルメディアプラットフォームのプライバシーには多くの問題があります。ユーザーは、これらのプラットフォームを使用する方法を学びつつ、自身と自身のデータを可能な限り保護する必要があります。
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